はじめに:FAQページ、読まれてますか?
「HPに書いてあるのに、同じ質問の電話が鳴り止まない…」
「新人スタッフが毎回先輩に確認しに来て、業務の手が止まる…」
多くの企業が抱えるこの悩み、実はAIの力で解決できます。しかも、プログラミングの知識は一切不要です。
今回は、ノーコードAI開発プラットフォーム「Dify」を使って、自社のホームページやマニュアルを学習し、まるでベテラン社員のように回答してくれる「自社専用お問い合わせAIボット」の作り方を、ステップバイステップで完全解説します。
なぜ「普通のチャットボット」ではダメなのか?
従来のキーワード検索型ボットと、今回作成するAIボットには決定的な違いがあります。
| 従来のボット | 今回作るAIボット(RAG) |
|---|---|
| 「キャンパス見学」で検索 → 該当キーワードなし → 「見つかりませんでした」 | 「キャンパス見学」で検索 → 「オープンキャンパス」の記事を参照 → 「見学にはオープンキャンパスへの予約が必要です」と回答 |
今回作成するのは、RAG(検索拡張生成)という技術を使ったAIです。
AIが質問の「意味」を理解し、自社のデータベースから関連情報を探し出し、それを元に自然な日本語で回答を生成します。
ハンズオン:自社専用AIボットの作り方
ここからは実際に手を動かして作ってみましょう。所要時間は約45分です。
STEP 0:事前準備
Difyをローカル環境(自分のPC内)で動かすための準備をします。
※クラウド版Difyを使用する場合は、このステップはスキップ可能です。
- Docker Desktopをインストール
- Gitをインストール
- ターミナル(PowerShell)で以下のコマンドを実行し、Difyを起動
git clone https://github.com/langgenius/dify.git
cd dify/docker
cp .env.example .env
docker compose up -d
ブラウザで http://localhost/install にアクセスし、管理者アカウントを作成すれば準備完了です。
ローカル版Difyを構築する方法については、以下の記事で詳細を説明しています。

STEP 1:知識(ナレッジ)の登録
AIに学習させたい自社の情報を登録します。
「ナレッジ」を登録する。
Difyの画面上部「ナレッジ」→「ナレッジを作成」をクリックして、あなたの組織のHPをAIに学習させます。
- 画面上部の「ナレッジ」タブをクリック

2.「Webサイトから同期」を選択
今回は、Firecrawlを使用する例を示します。

Firecrawlとは?
- Webサイトを自動で読み取るツール
- 設定は最初の1回だけ!

- 「🔥Firecrawl」→「設定」を選択
- 「firecrawl.devからAPIキーを取得する」をクリック
- 無料アカウントを作成(メールアドレスだけでOK)
- APIキーをコピーして貼り付け
自社HPのURLを入力
「Webサイトから同期」を選択し、自社HPのURL(例:FAQページ、会社概要など)を入力します。

- 重要設定:
- インデックスモード:高品質
- 埋め込みモデル:text-embedding-3-large(精度が高くおすすめ)
- 「保存して処理」をクリックし、学習完了を待ちます。

おすすめ設定:
- 最大チャンクサイズ:800文字
- チャンクのオーバーラップ:100文字
検索設定の選択:
| 設定項目 | 推奨設定 | 説明 |
|---|---|---|
| インデックス方法 | 高品質 | 最新のtext-embedding-3-largeモデル使用 3072次元の超高精度ベクトル化 |
| 検索タイプ | ハイブリッド検索 | ベクトル検索:意味を理解する検索 全文検索:キーワード完全一致 両方の良いとこ取り! |
| トップK | 3 | 上位3件を取得 |
| スコア閾値 | 0.5 | 関連度50%以上 |
STEP 2:チャットボットの作成

学習した知識を使って回答するボットを作成します。
- 「スタジオ」→「最初から作成」→「チャットボット」を選択。
- コンテキスト: STEP 1で作成したナレッジを追加します。
- プロンプト(役割設定): AIに振る舞いを指示します。
あなたは株式会社〇〇のカスタマーサポート担当です。 以下のコンテキスト(学習した知識)のみに基づいて、お客様の質問に丁寧に回答してください。 コンテキストに情報がない場合は、「申し訳ありませんが、その件については分かりかねます。担当者へ直接お問い合わせください」と答えてください。 嘘や推測での回答は禁止です。
STEP 3:動作テストと調整
右側のプレビュー画面で実際に質問してみましょう。
「営業時間は?」「返品できますか?」など、HPに記載されている内容を聞いてみてください。
もし回答がズレている場合は、「検索設定」から「ハイブリッド検索」に変更したり、「Rerank設定」を有効にしたりすることで、回答精度を劇的に向上させることができます。

導入効果と活用のヒント
このAIボットを社内FAQや顧客対応に導入することで、以下のような効果が期待できます。
- 対応時間の削減: よくある質問への回答を自動化し、有人対応を削減。
- 24時間対応: 夜間や休日でも即座にレスポンス可能。
- ナレッジの統一: ベテランも新人も、同じ正確な情報に基づいて回答できる。
Difyを使えば、プログラミング知識がなくても、自社専用の高度なAIアシスタントを簡単に構築できます。
まずは社内用として小さく始めて、徐々に精度を高めていくのが成功の秘訣です。ぜひ挑戦してみてください。
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