デジタルノートアプリ戦国時代ともいえる今、二つのツールが大きな注目を集めています。
一方は、タスク、ドキュメント、データベースまで、すべてを集約する**「All-in-oneワークスペース」こと「Notion(ノーション)」。 もう一方は、個人の知識をリンクで繋ぎ合わせ、「第二の脳(Second Brain)」を構築することに特化した「Obsidian(オブシディアン)」**です。
どちらも「ノートアプリ」と一括りにされがちですが、その設計思想(フィロソフィー)は正反対と言っても過言ではありません。
「どちらを使えばいいか分からない」 「Notionを使っているけど、Obsidianも気になる」
この記事では、両者を徹底的に比較し、あなたの目的やスタイルに合った最強のデジタルノートを見つけるお手伝いをします。
1. 思想(フィロソフィー)の決定的な違い
ツールを選ぶ上で最も重要なのが、そのツールの「思想」です。
Notion: 「情報を整理・共有する」ためのワークスペース
Notionの思想は、**「構造化」と「共有」**です。
- 例えるなら:
- チーム全員がアクセスできる、きれいに整理された「デジタルオフィス」
- 高性能な検索機能がついた「無限のファイリングキャビネット」
- 中心機能: データベース
- 得意なこと: 情報を「タスク」「プロジェクト」「議事録」といった明確な「型」にはめ、チームで共有・管理すること。カレンダー、タスクリスト、Wiki、ドキュメントを一つの場所に集約(All-in-one)できます。
Obsidian: 「知識を繋げる」ための第二の脳
Obsidianの思想は、**「接続」と「所有」**です。
- 例えるなら:
- あなたの脳内にあるアイデア同士が自由に繋がりあう「個人の研究室」
- リンクをたどって知識を深めていく「デジタル・ガーデン(庭)」
- 中心機能: 双方向リンク(
[[]])とマークダウンファイル - 得意なこと: ノート同士をリンクで繋ぎ、予期せぬアイデアの発見を促すこと。データはすべてあなたのPC内(ローカル)にあるため、高速・オフラインで動作し、データの所有権は完全にあなたにあります。
2. 機能と特徴の徹底比較
両者の違いを一覧表で比較してみましょう。
| 項目 | Notion (All-in-oneワークスペース) | Obsidian (第二の脳) |
|---|---|---|
| データの保存先 | クラウド | ローカル (あなたのPC内) |
| 主な思想 | 情報を**「整理・共有」**(データベース型) | 知識を**「繋げる」**(リンクベース型) |
| 動作速度 | オンライン前提(ネット環境に依存) | 非常に高速 (オフライン動作が基本) |
| データ所有権 | サービス側(クラウド上) | ユーザー側 (ローカルの .md ファイル) |
| 得意分野 | チームでの共同作業、タスク・プロジェクト管理 | 個人の知識管理、アイデア創出、執筆 |
| 苦手分野 | オフライン作業、動作の軽快さ | チームでのリアルタイム共同編集 |
| 共同編集 | 非常に得意(同時編集・コメント・共有) | 限定的(有償同期サービスはあるが同時編集は非対応) |
| 拡張性 | API連携 (Dify, Gmail, Googleカレンダー等) | プラグイン (非常に豊富、UIの根本的な変更も可) |
| コスト | 無料プランあり(個人利用は十分) チーム利用は有料 | 完全無料 (ローカル利用の場合) ※公式同期・公開は有償 |
3. NotionがObsidianより優れている点
Notionを選ぶべき最大の理由は、「他者との連携」と「構造化されたデータベース」です。
① 圧倒的な「データベース」機能
Obsidianにもデータベース機能(プラグイン)はありますが、Notionの「リレーション」「ロールアップ」「多彩なビュー(カレンダー、カンバン、タイムライン)」には及びません。
- 活用例: タスク管理、プロジェクトの進捗管理、コンテンツカレンダー、家計簿など、「決まった型」で情報を蓄積・管理するならNotionが最適です。
② 優れた「共同編集・共有」機能
Notionは、初めからチームで使うことを前提に設計されています。複数人での同時編集、ページ単位でのコメント、Webページとしての簡単な一般公開など、コラボレーション機能はObsidianを圧倒しています。
- 活用例: チームのWiki作成、議事録のリアルタイム共同編集、クライアントへの資料共有。
③ 「All-in-One」の集約力
API連携により、Gmail、Googleカレンダー、Slack、Difyなど、他のSaaSツールをNotionに集約できます。これにより、Notionを「仕事の司令塔」として機能させることが可能です。
4. ObsidianがNotionより優れている点
Obsidianを選ぶべき最大の理由は、「個人の思考の深化」と「データの完全な所有」です。
① ローカル・ファーストとデータの完全な所有権
あなたの全データは、あなたのPC上のプレーンなテキスト(マークダウン)ファイルです。
- メリット:
- 高速: アプリの起動も検索も瞬時です。
- オフライン: ネット接続がなくても全機能が使えます。
- 永続性: 万が一Obsidianが開発を終了しても、あなたのデータ(.mdファイル)は永遠に残ります。
- セキュリティ: クラウドに上げたくない機密情報も安心して保存できます。
② 「リンク」による知識の接続
Obsidianの核となる機能が [[双方向リンク]] です。
- 活用例: 読書メモ
[[A]]と、別の日に書いたアイデアメモ[[B]]が、[[共通の概念C]]というノートを介して繋がります。この「予期せぬ繋がり」が、新しいアイデア(AとBの組み合わせ)を生み出すトリガーとなります。
③ グラフビューとCanvas
ノート同士の繋がりを視覚化する「グラフビュー」や、ノートや画像を自由に配置できる「Canvas(キャンバス)」機能により、思考をマインドマップのように広げ、整理することができます。
結論:あなたに合うのはどっち?
どちらが「最強」かは、あなたの目的によって決まります。
⭕️ Notionがおすすめな人
- チームでプロジェクトを管理したい人
- タスク管理とドキュメント作成を一元化したい人
- 情報を「データベース」できっちり構造化するのが好きな人
- 作成したページをWebサイトとして外部に公開したい人
- GmailやGoogleカレンダーなど、他のWebサービスと連携させたい人
⭕️ Obsidianがおすすめな人
- **個人の「第二の脳」**を構築したい人
- 読書メモ、学習ノート、研究メモ、日記を長期的に蓄積したい人
- アイデア同士を繋げて、新しい発想を生み出したい人
- 動作の軽快さやオフラインでの利用を最優先する人
- 自分のデータをクラウドではなくローカルで完全に所有したい人
最終提案:「併用」という最強の選択肢
多くの熟練ユーザーが、NotionとObsidianを併用しています。これが、両者の長所を最大限に活かす「最強の布陣」かもしれません。
- Notion (司令塔・共有):
- チームのプロジェクト管理
- タスク管理(ToDoリスト)
- Googleカレンダーとの連携(スケジュール管理)
- Dify連携(AIナレッジベース)
- 外部公開用のドキュメント
- Obsidian (第二の脳・個人):
- 日々の思考や気づき(デイリーノート)
- 読書メモ、動画の学習メモ
- ブレインストーミング(Canvas)
- ブログや論文などの執筆
まずは、あなたが今一番解決したい課題(例:「タスク管理を効率化したい」ならNotion、「読書メモを活かしたい」ならObsidian)から始めてみましょう。


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