Difyで自社専用AIチャットボットを作る。顧客対応を24時間自動化する手順
「夜間や休日に顧客からの問い合わせに対応できない」「よくある質問にオペレーターが時間を取られ、コア業務に集中できない」——こうした課題を抱える企業にとって、AIチャットボットによる顧客対応の自動化は喫緊の課題となっています。
しかし、従来のチャットボット開発は高額なコストや専門知識が必要でした。
その常識を覆すのが、オープンソースのAIアプリ開発プラットフォーム**「Dify (ディファイ)」**です。Difyを使えば、プログラミングの知識が少なくても、自社の製品マニュアルやFAQを学習させた「自社専用のAIチャットボット」を構築し、Webサイトに設置できます。
この記事では、Difyを使って24時間稼働する顧客対応AIチャットボットを構築する具体的な手順を解説します。
なぜDifyが選ばれるのか? 3つのメリット
Difyは、GPT-4やClaude 3といった高性能なAI(LLM)と、自社の独自データ(ナレッジベース)を簡単に組み合わせられるプラットフォームです。顧客対応ボットにDifyを選ぶメリットは明確です。
- 自社データを即座に学習 PDF、テキスト、CSV、Markdown形式のサービス資料、マニュアル、FAQリストをアップロードするだけで、AIがその内容を学習。従来のチャットボットのように、一つひとつ手動でQ&Aを登録する必要がありません。
- ノーコード/ローコードでの構築 基本的なチャットボットであれば、ドラッグ&ドロップとテキスト入力(AIへの指示出し)だけで構築可能。エンジニアでなくても迅速に導入できます。
- 柔軟なAIモデル選択 OpenAIのGPTシリーズ、AnthropicのClaudeシリーズ、GoogleのGeminiなど、主要なAIモデルを自由に選択・切り替えできます。コストと性能のバランスを見ながら最適なモデルを選べます。
【実践】Difyで顧客対応AIチャットボットを構築する5ステップ
ここでは、Difyのクラウド版(手軽に始められる無料プランあり)を例に、構築手順を解説します。
ステップ1: Difyの環境準備
まずはDify Cloudにアクセスし、Googleアカウントやメールアドレスでサインアップします。これだけですぐに開発環境が整います。(※より高度なカスタマイズやセキュリティを求める場合は、自社サーバーにインストールするセルフホスト版も選択可能です)
ステップ2: アプリケーション(チャットボット)の作成
- Difyにログインし、ダッシュボードから「アプリを作成」をクリックします。
- 「チャットボット」を選択し、アプリ名(例:〇〇サポートボット)と説明を入力して作成します。
ステップ3: ナレッジベース(自社データ)の登録
ここが最も重要なステップです。AIに「何を回答させるか」を教え込みます。
- 作成したアプリの左側メニューから「ナレッジ」を選択します。
- 「ナレッジの作成」をクリックし、顧客対応に使う資料(PDF、TXT、CSVファイルなど)をアップロードします。
- おすすめの資料: FAQリスト(CSV推奨)、製品マニュアル、サービス利用規約、料金表など。
- アップロードが完了すると、Difyが自動的にドキュメントを分割・ベクトル化(AIが理解できる形式に変換)します。
ステップ4: プロンプトエンジニアリング(AIのキャラクター設定)
次に、AIの「役割」や「口調」を指示します。
- 左側メニューから「プロンプト」を選択します。
- 「プロンプト・エンジニアリング」の欄に、AIへの指示(システムプロンプト)を書き込みます。
【顧客対応ボットのプロンプト例】
あなたは「(自社名)のカスタマーサポート担当」です。
以下の制約条件とナレッジベース({query}に関連するコンテキスト)を厳密に守り、顧客の質問に回答してください。
# 制約条件:
- 常に丁寧な「です・ます」調を使用してください。
- 回答はナレッジベースの情報にのみ基づいてください。
- ナレッジに記載のない情報、価格に関する推測、またはあなたの意見を述べてはいけません。
- 質問がナレッジベースの情報で解決できない場合は、「申し訳ございませんが、そのご質問についてはお答えできる情報がございません。恐れ入りますが、オペレーターにお問い合わせください。」と正確に回答してください。
この指示により、AIは自社データ(ナレッジ)に基づいて、設定された役割通りに回答するようになります。
ステップ5: テストとWebサイトへの埋め込み
- 画面右上の「▶ (デバッグとプレビュー)」をクリックします。
- プレビュー画面で、実際の顧客が入力しそうな質問(例:「料金プランを教えてください」「解約方法は?」)を投げかけ、AIがナレッジベースに基づいて正しく回答するかをテストします。
- 回答が不正確な場合は、ステップ3(ナレッジの追加)やステップ4(プロンプトの調整)に戻って精度を高めます。
- 問題がなければ、左側メニューの「概要」ページに進みます。「埋め込み」セクションにあるHTMLコード(
<script>タグや<iframe>タグ)をコピーします。 - コピーしたコードを、自社WebサイトのHTML(例:サポートページやトップページの右下)に貼り付けます。
これで、あなたのWebサイトに24時間応答可能なAIチャットボットが設置されます。
チャットボットの精度を上げるためのヒント
設置して終わりではありません。AIチャットボットは「育てる」ものです。
- ナレッジの質を高める: PDFを丸ごと入れるだけでなく、よくある質問は「質問」と「回答」が対になったCSVファイルで登録すると、回答精度が飛躍的に向上します。
- ログを分析する: Difyの「ログと注釈」機能で、ユーザーが実際にどのような質問をし、AIがどう回答したかを確認できます。AIが回答できなかった質問は、すぐにナレッジベースに追加しましょう。
- プロンプトを調整する: 回答が長すぎる場合は「簡潔に回答してください」、情報が不足している場合は「より具体的に回答してください」など、プロンプトを微調整します。
高度な構築・運用サポートが必要な場合は
Difyを使えば基本的なチャットボットの構築は驚くほど簡単です。しかし、「自社の複雑なナレッジをどう整理すればAIが理解しやすいか」「プロンプトをどう書けば回答精度が上がるのか」「社内システムと連携させたい」といった悩みが出てくるかもしれません。
自社でのリソース確保が難しい場合や、導入効果を最短で最大化したい場合は、専門家のサポートが有効です。
ミラーマスター合同会社「Difyチャットボット構築支援」
私たちは、Difyの導入支援、ナレッジベースの最適化、高精度な回答を引き出すプロンプトエンジニアリング、そして運用後の保守・改善までをワンストップでサポートします。
[→ Difyチャットボット構築支援サービスの詳細はこちら]
まとめ
Difyを活用することで、従来は高コスト・高スキルが求められた「自社データに詳しいAIチャットボット」の構築が、現実的な選択肢となりました。
24時間365日稼働するAIサポート担当を導入することで、顧客満足度の向上と、社内オペレーターの業務負荷軽減を同時に実現できます。まずは無料のクラウド版から、その可能性を試してみてはいかがでしょうか。



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